昨今のデジタルカメラやスマートフォンなどは、写真補正をすべて自動で調整してくれる。そのため写真撮影の深い知識がなくてもきれいな写真が撮影できありがたい。
とはいえ実はマニュアルモードの撮影も奥深くて面白い。写真撮影を趣味としている人は、マニュアル撮影モードで自分なりの表現を楽しむのが醍醐味だ。
本稿では、主にマニュアルモードでの写真を検討している方向けに、写真撮影に関する押さえておきたい基礎知識ついていくつかまとめた。オートでの撮影で十分だという方も、写真を撮影するうえでの仕組みを理解しておくと上達のスピードが上がるかもしれない。
目次
基礎知識
露出(EV)とは
露出とは、撮影するときに取り込まれる光量のこと。単位は「EV」。簡単に言えば写真を明るく仕上げるか、暗く仕上げるかの違いだ。
カメラはレンズを通って入ってきた光をイメージセンサー(撮像素子)に当てるが、その当てる量を露出という。露出を調整することで写真の明るさが決まってくる。光量が多い場合は光を制御し、逆に少ない場合は多く取り入れるのがよい。
露出は「絞り」と「シャッター速度」のふたつの関係で決まる。あるいはそこに加え「ISO感度」という感度調整でも調整できる。
ちなみに昨今のカメラには「露出補正」という補正機能が搭載されているものも多く、深く学ばなくてもよいのであれば「絞り優先」モードで露出補正を使おう。
絞り(F値)とは
絞りとは、カメラにレンズから入ってくる光の量のこと。「F値」で表す。
F値が小さいと絞りが開き、光が入る量が増える(明るくなる)。
F値が大きいと絞りが閉じ、光の入る量が減る(暗くなる)。
シャッター速度とは
シャッター速度とは、光を当てる時間のこと。イメージセンサーの前にシャッターという光を遮る幕があるのだが、その幕を開いたり閉じたりして当てる時間を調整する。
シャッター速度が遅いと、シャッターが開いている時間が長く光がたくさん入る(明るくなる)。
シャッター速度が速いと、シャッターが開いている時間が短く光があまり入らない(暗くなる)。
シャッター速度が遅いと、水の流れを線で表現するような「軌跡が連なる写真」の撮影ができる(ただし三脚で固定するべき)。
シャッター速度が速いと、水しぶきが跳ねる様子のような「動いている被写体の一瞬」を撮影できる(一般的には被写体が動いていればシャッタースピードは速くするべき)。


ISO感度とは
前述のとおり、露出は「絞り」と「シャッター速度」の関係性で決まる。
とはいうものの注釈で示した通り、それらは露出だけに影響をあたえるわけではない。被写界深度や動いている被写体撮影の表現にも影響を与える。写真そのもの(明るさ以外)のことも考慮すると、最適な絞りとシャッター速度が見いだしにくいケースがある。
そうした場合は、イメージセンサーの光の感度の上げ下げを調整する「ISO感度」を知っておくと便利だ。ISOとは光を感じる能力を数値化したときの単位のこと。センサーの光に対する感度を2倍にできれば、必要な光の量は半分になる。その分絞りとシャッター速度の融通がきく。
ISO感度の数値が高ければ、感度が高く、暗い場所でも明るくなる。
逆にISO感度の数値が低ければ、感度が低く、明るい場所でも暗くなる。
露出補正とは
露出補正とは、文字通り露出を補正すること。撮影した写真を「もう少し明るくしたい」あるいは「もう少し暗くしたい」というときに、撮影後でも露出を補正し写真の明るさをコントロールできる。
露出に関してマニュアルモードでの撮影にこだわらないのであれば、「絞り優先」モードで露出補正を使って調整すればよいだろう。
被写界深度とは
被写界深度とは、「ピントの深さ」あるいは「ピントが合っている範囲」のこと。手前の物体を強調するために背景をボヤケさせるような表現に調整したければ、被写界深度の概念を理解しよう。
被写界深度が浅ければ、フォーカスが合う範囲が浅く背景ボケの表現が使える。
被写界深度が深ければ、フォーカスが合う範囲が深く全体が鮮明に映る。
絞り値(F値)とは
前項で解説したとおり露出も影響を与える「絞り」だが、これを開いたり閉じたりすることで被写界深度が調整できる。
F値が小さいと絞りが開き、被写界深度が浅くなる(背景ボケ)。
F値が大きいと絞りが閉じ、被写界深度が深くなる(全体が鮮明)。
焦点距離
レンズの違いによって焦点距離の長さが違う。望遠レンズは焦点距離が長く、広角レンズは短い。
焦点距離が長ければ長いほど(望遠レンズを使えば)、被写界深度は浅くなる(背景ボケ)。
逆に焦点距離が短いほど(広角レンズを使えば)、被写界深度は深くなる(全体が鮮明)。
撮影距離
撮影距離が近ければ、被写界深度は浅くなる(背景ボケ)。
撮影距離が遠ければ、被写界深度は深くなる(全体が鮮明)。
ホワイトバランスとは
ホワイトバランスとは、白を白として正しく映せるように補正する機能。適切に設定していれば、写真は目に見えている状態と同じように映る。
逆にホワイトバランスを調整することによって、写真を赤っぽくしたり青っぽくしたりできる。印象がガラリと変わって味わい深い一枚になる。